シンガポール知財ブログ

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シンガポール弁理士の数

 シンガポール弁理士は何人くらいいるのと時々聞かれる。いつも100人とか150人とかいい加減なことを答えているのだが、ちゃんと数えてみた。全員の名前と所属等が公開されているのである。下記リンクのThe Register of Patent AgentsからPDFファイルがダウンロードできる。

The Register of Patent Agents and the Register of Foreign Patent Agents

ちなみにシンガポール弁理士は登録料が150ドル(12000円)で更新料が年150ドル(12000円)となっている。現時点できちんと更新料を支払って更新している人を太字、支払ってない人を細字で、これまでシンガポール弁理士になったことがある人全員の名前が出ている。つまりこのリストに名前がないのにシンガポール弁理士を名乗る人の言うことは疑っておいた方が良い。

シンガポール弁理士には2通りある。NはNew regimeでTはtransitional regime。

  1. N (rule 6) : individuals who have been doing patent agency work on or after 2 Jan 2002. They are entitled to be registered after meeting the requirements set out in rule 6.
  2. T (rule 23) : individuals who have been doing patent agency work in Singapore for a specified period, before 2 Jan 2002. They are entitled to be registered after meeting the requirements set out in rule 23.

シンガポールは1994年までイギリスで特許になったものの再登録制度を採用していて、特許制度の歴史が浅い。弁理士というものもほとんど必要なかった。弁理士試験が始まったのも2002年のようである。

そういうわけで、2002年以降に試験に受かった者(N)と2002年以前に代理人業務をしていた者(T)を弁理士としている。この昔から業界にいたから試験免除という制度は、ヨーロッパでGrandfather clauseと呼ばれるものと同じである。Transitionalと言いながら12年続いているが、いずれヨーロッパのように撤廃されるのだろう。

2014年7月2日現在、弁理士は178名。このうち更新手続きを済ませている者は121名(T:57名、N:64名)である。更新していない57名はもうシンガポールに住んでないとか、代理人業務をしていないとかそういう感じだろう。所属先別にリストにしてみた。

Company T N
W P Lai & Company 2 0
Axis Intellectual Capital Pte Ltd 1 1
Drew & Napier LLC 2 1
CitiLegal LLC 1 0
Yusarn Audrey 1 2
Bernard & Rada Law Corporation 1 0
Ella Cheong LLC 1 0
Viering, Jentschura & Partner LLP 1 8
Marks & Clerk Singapore LLP 1 15
Patrick Mirandah Co (S) Pte Ltd 2 0
K L Tan & Associates 2 0
hslegal LLP 1 0
ATMD BIRD & BIRD LLP 3 2
Lee & Lee 3 0
Rodyk & Davidson LLP 2 3
Ravindran Associates 3 0
Amica Law LLC 3 2
Nanyang Law LLC 1 0
Infinitus Law Corporation 4 0
Francine Tan Law Corporation 1 0
Mirandah Law LLP 1 0
Ramdas & Wong 1 0
Joyce A. Tan & Partners 2 0
Donaldson & Burkinshaw 5 4
Namazie & Co 1 0
Wong Partnership LLP 1 0
Allen & Gledhill LLP 1 3
Gateway Law Corporation 1 0
Henry Goh (S) Pte Ltd 1 0
One Legal LLC 1 1
Horizon IP Pte Ltd 1 2
Carmichael & Co Pte Ltd 0 1
Arielle Law Corporation 1 0
Continental Law LLP 1 0
KhattarWong LLP 1 0
Abraham Low LLC 2 0
Cinda Singapore Pte Ltd 0 2
Spruson & Ferguson (Asia) Pte Ltd 0 9
McLaughlin IP Pte Ltd 0 1
Schweiger & Partners (Singapore) LLP 0 1
Cantab LLP 0 1
Pyprus Pte Ltd 0 1
RAJAH & TANN LLP 0 1
Synergy IP Pte Ltd 0 1
Razer (Asia Pacific) Pte Ltd 0 1
Intellectual Property Office of Singapore 0 1
Total 57 64

シンガポール弁理士試験2014受験要項が公開されてた

正式名称はPatent Agents Qualifying Examination 2014。受付開始したというメールが来ていたので一応紹介。

Patent Agents Qualifying Examination

今年は10月7日(火)から10日(金)までの4日間。場所は未定。受付締め切りは8月31日。前日の10月6日(月)はハリラヤ・ハジの振替休日のようで、直前まで勉強できそう。ざざっと受験要項を見たところ、去年と同じくノートPCで受験するみたいな感じ。ノートPCを使いたくない人はオプトアウト。

昨年はPaper B(拒絶理由応答・補正)を受けて5点足りなくて落ちたので、今年は受かりたいなあと思っている。あと今年はPaper A(請求項作成)も受ける予定。

日本で4年、シンガポールで3年、計7年特許の仕事をしているわけで、そろそろ弁理士になりたい。そんなわけで今年は3つの手を打つことにした。詳細についてはいずれ書くつもり。

自己査定制度とは何だったのか

自己査定制度(self assessment system)とは、出願が特許され得るものかどうかは出願人自身が判断するという制度。でも無審査だったわけではなく、どこかで審査されていることが要求されていた。

自己査定制度ですら特許されないもの

  • 公序良俗違反(最初の方式審査ではねられて公開すらされないはず)
  • 他国の審査結果において、請求項が不明確で審査が行われなかったもの
  • 他国の審査結果において、請求項に単一性がなく一部の請求項しか審査されなかったもの
  • 対応外国出願の請求項に対応していないもの

ISAでも他国の審査官でもいいが、とにかく誰かがなんらかの審査をしている必要があった。あんまり変なのを出すと、deficiency letterがやってくる。対応外国出願よりも請求項が増えちゃったりすると、まず間違いなくどの請求項がどの請求項に対応しているか説明せよって言われる。

この制度のいいところは、出願人が自信を持って審査官がおかしいと言えるときに、その審査官を説得しなくても特許が取れるというところ。そもそも審査官がOKと言ってても裁判でひっくり返ることがあるわけで、審査官の判断は絶対ではない。その辺りの白黒はっきりさせるのは裁判所でやりましょうというのが、この自己査定制度の根幹にあるものである。そこらへんの判断をすべて裁判所に委ねるという割り切りから生まれた制度である。

しかし、特許庁でもある程度ちゃんと審査をしよう、全部裁判所に委ねるなんてのはよくないと言って始まったのがpositive grant system。特許性の三要件を見るようになった。すなわち

  • 新規性
  • 進歩性
  • 産業上利用可能性

の3つである。少しずつ普通に近づいていくシンガポール特許制度。

この記事で言いたかったのは、自己査定制度でも特許庁は少しは形式上のチェックをしていたよということである。

新システム始動

今日の朝8時半からIPOSの新しいシステムIP2SGが動き出した。

http://www.ip2.sg

特許の出願のやり方と、特許の検索のやり方が変わった。出願番号のフォーマットも変わった。出願番号が新法と旧法で違うと、ぱっと見てどっちに対応するかわかりやすいってのはありがたい。

これまではlodging yearが来て5桁続いて、dashとcheck digitという感じ。

200000000-0

今後は最初に10か11が来て(PCTと通常出願を識別)、lodging yearが来て、その後何桁かあって、dashはなし。

10201400000

同僚が出願しているのをちょっと見ただけで、自分ではやってないので記憶が定かではない。

検索するデータベースはけっこう改善されたのでいろいろ遊び甲斐がある感じがした。

シンガポール審査基準2014

今日(2月14日)から施行された改正特許法・特許規則。といってもまだ新しいシステムが動いていないので、特に新しい動きはない。物好きは紙出願をしているかもしれないが、基本的に19日のシステム開始からスタートだろう。改正を含んだ条文は既に更新されている。

Singapore Patent Act

http://statutes.agc.gov.sg/aol/search/display/view.w3p;page=0;query=DocId%3A%222e82e574-7304-4657-b7c4-54e289938d1d%22%20Status%3Ainforce%20Depth%3A0;rec=0

Singapore Patent Rules

http://statutes.agc.gov.sg/aol/search/display/view.w3p;page=0;query=CompId%3A0b347a79-771d-4c91-880c-68b3dbff22e9%20ValidTime%3A20140128000000%20TransactionTime%3A20140128000000;rec=0

以前書いた通りで、それ以上のことは何もないので特に触れない。今日もう一つ更新されたのは、審査基準。

Examination Guidelines for Patent Applications at IPOS (2014)

http://www.ipos.gov.sg/Portals/0/Patents/Examination%20Guidelines%20for%20Patent%20Applications%20at%20IPOS_Feb%202014.pdf

これまでのは80ページくらいだったのが、一気に3倍くらいの厚さになるという気合いの入り方。先日このフィードバックセッションに参加してきたのだが、オーストラリアの特許庁出身のチーフっぽい人や、UKの特許庁出身の人など、予算のたっぷりついた特許庁が熟練した外国人を雇って世界で戦えるものを作ろうとする心意気が窺えた。シンガポールの審査官はたぶん全員PhD持ち。Common senseとPragmatismをモットーに審査をするそうだ。これは朗報。

この審査基準を読めばわかるが、判例も豊富だし、デリケートな問題に対してきちんとシンガポールのポジションを示していて非常に興味深い。読んでいてとても勉強になる。

この書類も面白いが、フィードバックセッションも非常に充実していた。外注先でもシンガポールと同様に審査するように依頼しているけれども、やはりばらつきが出てくるので、2、3年後には全案件シンガポールで審査したいから人員増強中とか。今回の法改正でsupplementary examinationってのが導入されるけど、やはり全案件普通の審査でやるのが望ましいとか。

10年後のシンガポール特許はきっともっと普通の国っぽくなっているのだろう。それはそれで非常に楽しみだ。

シンガポールの特許審査の現状

シンガポールでは特許審査を他国の審査官に外注しているということが知られている。オーストリア、デンマーク、ハンガリーの3ヶ国に審査官がシンガポールの法律、審査基準に沿って審査を行っている。その後シンガポール知的財産庁(IPOS)は、自国で審査を始めるべく、20人の審査官を雇ってトレーニングをした。まだ審査官を積極採用中のようである。

そんな状態なのでIPOSで審査した拒絶理由通知が来るのはまだまだ先だと思っていたのだが、時々見かけるようになってきた。同僚の案件で1件、自分の案件で2件IPOSに審査されている拒絶理由通知を受け取った。審査官の電話番号は書いてないのでわからないことがあっても電話できないけれども、審査官全体宛のメールアドレスは書いてあった。そんなわけで、シンガポールの特許庁では審査できないという情報はもう過去の話になる。

これが関係しているかどうかわからないが、最近審査結果が出てくるのが非常に早くなった気がする。これまで審査請求をしてから1年くらいかかっていたのだが、最近3ヶ月くらいで返ってくる案件が少なからずあり、かなり回転が速くなっている印象だ。クリスマス前に審査官が終わらせたかったからなのか最近早まっているのかわからないが、拒絶理由通知を11月には10件、12月には6件受け取っていて、その5ヶ月後の4月5月の期限がかなり厳しそうな予感。年内にいくつか補正案をお客さんに送ってしまいたいところ。

特許規則改正の日程が延期

1月11日を予定していたのが、2月14日に延期するというメールが今日来た。新システムの導入も2月19日からだとか。そういうわけでしばらく現在のままで特に変更はない。

今回の改正でようやく変わるのは、対応外国出願の定義。これまで同じ出願の優先権主張をしている場合のみ他国の出願の結果を利用できたので、PCT出願が優先権主張をしていない場合に他国の結果を利用できなかった。明らかに同じPCT出願の別の国の国内段階移行なのに、単にPCTが優先権を主張していないだけで対応外国出願とみなされなかったのである。そこが変わった。たとえPCT出願が優先権主張をしていなくても、別の国の国内段階移行を対応外国出願とみなすようになった。地味に大きな進歩。

もう一つ実務上の地味な進歩として、要約ページの1行目に発明の名称をいれなくてもよくなることが挙げられる。要約なんだからAbstractって一番上に書いてあるのが普通なんだけど、それで出すと方式違反で訂正を求められていた。その条項が取り払われたので、お客さんからもらった明細書の要約ページを直さなくてよくなる。