シンガポール知財ブログ

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ドン・キホーテのシンガポール商標

ディスカウントストアであるドン・キホーテシンガポールに進出した際に、Don QuijoteではなくDon Don Donkiの名称を使用した。既存のスペイン料理の店との混同を避けるためと言われている。

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While the stores in Japan are called Don Quijote, its Singapore branch name has been changed to avoid confusion with a local Spanish restaurant of the same name. The term “Don Don Donki” was taken from the store’s theme song.

Don Don Donki to open second Singapore store - Inside Retail Asia

 ちなみにそのスペイン料理の店はここ。

詳細が気になったので、シンガポールのDon Quijote関連の商標を見てみた。

このスペイン料理の店の看板のような書体でDQR HOLDINGS PTE. LTD.という会社から2件の商標出願がされている。"paella especial don quijote"と"fideua especial don quijote"についてどちらも43類レストラン・ケータリングについて2010年に出願されており、その後"Treated As Withdrawn"のように取り下げとみなされている。

一方日本のDon Quijote Holdings Co., Ltd.は、Don Quijoteという商標を35類リテールサービス・オンラインリテールサービスと、18類バッグ・ポーチに関して出願して登録されている。つまり、日本のドン・キホーテシンガポールに来た時点においてDon Quijoteという商標では特にコンフリクトはなさそうである。Don Don Donkiとなったのは単にスペイン語のDon Quijoteでは馴染みにくいと判断されたのかもしれない。

またDon Quijote Holdings Co., Ltd.はシンガポールで様々な商標を出願している。

Don Don Donki、Don Quijote、Donki、ドン.キホーテという社名に関する商標に加えて、驚安の殿堂のようなキャッチフレーズ、腹部に「ド」や「D」とあるキャラクター、maj!caという電子マネーサービス、その他様々な自社ブランドの商標も出願している。

例えばInterno(インテリア)、green stage(キャンプ用品)、zooterior(動物をモチーフとしたインテリア雑貨)、Aspiration(ヘアアイロン)、休息美人(足に貼るシート)、情熱価格(価格訴求ブランド)、OUCHI(生活雑貨)、Activegear(スポーツ)、Restoration(ファンション)の商標がシンガポールで出願されている。店舗を確認していないので既に販売されているのかは不明だが、これらのブランドの商品も遅かれ早かれシンガポールで販売されるのかもしれない。

シンガポールの特許審査ハイウェイプログラム

昨年8月に転職して以来、つい最近まで内外案件ばかりで外内案件がすっかりおろそかになってしまった。明細書を書いたり、USのOA応答をしたりすることには慣れてきたが、やっていないとシンガポールの細かい手続きの記憶が薄らいでいく。今月末・来月末に辞める同僚からたくさん外内案件を引き継いだので、今後は前の会社でやっていたような外内案件もやることになる。来週会社との3年契約にサインするので、これまで以上に腰を据えてシンガポールの特許と関わることになるはず。

今日ここに書いておきたいと思ったのは、昨年大きく変わった特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムのことだ。特許庁のホームページがこっそり変わっていて最近まで全然知らなかったが、また一つシンガポール普通の国に近づく変更をした。

Patent Prosecution Highway (PPH)

基本的にシンガポールの審査ルートは2つある。

  • 実体審査を行う
  • 方式審査のみを行う

2014年11月まではシンガポールでPPHというと方式審査に属していた。例えば日本で既に特許になっている請求項を利用する場合には、日本の特許の翻訳文を送って方式審査を求める際に、PPHというチェックボックスにチェックをする。正直無意味なシステムだった。チェックボックスにチェックをしてもしなくても日本の特許の請求項を出して方式審査するだけだから。

それが2014年11月にシンガポールがグローバルPPHに加入して大きく変わった。シンガポールのPPHは実体審査に属することになった。他の国では当たり前のことだけど、シンガポールでもそうなったのである。これまで通り日本の特許の翻訳文を送って方式審査を求めることも可能だが、それをもうPPHとは呼ばなくなった。特許庁がいまいちやる気ないのか、無意味なチェックボックスはまだ残っているが、上記のPPHのページの説明を読む限りPPHは実体審査請求と共に行うものとなっている。

日本の審査結果を使ってシンガポールで特許を取りたい出願人には2つの選択肢がある。

  • 日本の審査結果を用いたグローバルPPH(実体審査あり)
  • 日本の審査結果を用いた補充審査(方式審査のみ)

どちらが早くて安いかといえば、もちろん実体審査をしない方が早くて安い。PPHを使えば実体審査をした分だけ遅くなるしお金もかかる。その辺は出願人のニーズによりけりである。ただ、近頃のIPOSを見ているとあと5年か10年したら方式審査のみのルートは消えそうだ。消したがっているけど、消すと影響が大きいので過渡的に残しているルートなのだろう。

そんなわけでシンガポールの代理人に指示を出すときは、実体審査をしたいのかしたくないのかはっきり明記すると誤解がなくていいと思う。

シンガポールの特許審査官

前回こんなことを書いた。

現在シンガポール国内の審査官は40人体制だが、2020年までに審査官を200人に増やし、近いうちに全件シンガポールで審査する計画である。来週仕事でIPOSの人に会うので、その辺を少し聞いてみよう。

先週その話を聞いてきたのでここに書いておこう。1〜2ヶ月前に40人雇ったので現在80人審査官がいるそうだ。来年4月に更に20人加わるので来年は100人体制になるとのこと。一応2020年までに200人という数値は出ているが、実際のところ需要が読めないので、来年以降は調整しながら少しずつ人数を増やしていくと言っていた。

審査の質について、オーストラリアとイギリスから審査官を引き抜いてきたと書いたが、それは正確ではなかったみたい。オーストラリアとイギリスの審査官はConsulting Examinerとして来ているとのこと。期限はよくわからないけど。あと日本の特許庁からもConsulting Examinerが来るそうだ。

審査官の教育については、座学を半年やったのち、1年間のOJTとのこと。その後の審査についても、triple checkといってbuddyがまず調査の方針をチェックして、その後偉い人が更にチェックして、常に計3人が見る仕組みになっている。正直ここまで丁寧に審査をしているとは思わなかった。

審査官との面接について尋ねたところ、歓迎するけどまだ一件しか申し込みがないそうだ。メールアドレスしか書いてないのであまり歓迎していないのかと思ったがそうではないらしい。なぜ面接をしたいかという理由を添えてメールを出すと、電話や面接のアレンジをしてくれるそうである。

審査官のうち4人に1人が中国語を使えるので、中国語文献の調査をアピールしていて、出願前調査で中国語調査をするサービスを検討中らしい。まだ需要がよくわからないので、実際に始まるかどうかはわからないけれども。

ちなみに審査官はEPOでの訓練を受けているので、そういうスタイルの審査になるそうだ。使用するデータベースは大量に列挙されていたが何でもありな感じ。STNとかIEEEとか言ってたけど忘れてしまった。皆が博士号を持っているからというのもあるが、引用文献に特許ではなく論文が出てくることが少なくない。

そんなわけで、シンガポールの審査官の質は上々と言っても差し支えないと思う。

シンガポール、WIPOによりPCTの国際機関に指定

試験も終わり、たまたま言及されたのでこの話題。

シンガポールが自前の特許庁で審査を始めるようになったのは今年(2014年)2月14日の法改正後です。それまでは自己査定制度※をとっていて、自国の特許庁で審査をすることはありませんでした。

この表現は正確ではない。法改正前から、シンガポール特許庁の自前の審査報告書が何件か出ていた。前の年の12月で既に少なくとも3件はあった。


より正確に言えば、まだ全件をシンガポール国内で審査しているわけではなく、オーストリアデンマークハンガリーシンガポールを加えた4カ国のいずれかの国で審査される。現在シンガポール国内の審査官は40人体制だが、2020年までに審査官を200人に増やし、近いうちに全件シンガポールで審査する計画である。来週仕事でIPOSの人に会うので、その辺を少し聞いてみよう。

要するに、自己査定制度と自国審査は関係なく、むしろこれまで審査の外注をしていたので、自国で審査をした実績があまりないということである。むしろ本題はこちら。

このような中、国際出願のサーチがすぐにできるようになるんででしょうか?

これはできると思う。イギリスとオーストラリアと中国の経験豊富な審査官を引き抜いてきて、審査基準を定め、新たに採用した博士号持ち審査官をEPOとJPOで既にトレーニングしているから。

シンガポールで審査した拒絶理由通知をいくつか見たが、基本に忠実にけっこう丁寧に審査しているという印象を受けた。案件が多くて溢れかえっている国で審査するよりもこちらのほうがよほどいいのではないかと思うくらいだ。調査が英語と中国語で行われるというのも、他にはない特徴だろう。

あと早期審査を希望すれば、審査請求から60日以内にFirst actionが出るし、PPHでシンガポールの審査結果を多くの国で利用できるので、これまでと比べてシンガポールが非常に利用価値のある国になってきている。

むしろ驚いたのは、マレーシアやフィリピンもシンガポールに続いて資格獲得を目指していると記事に記載されていたことです。

元記事を読んでいないのだが、マレーシアはまだしも、フィリピンはないなあと正直思った。フィリピンは、審査請求しているのに他国の結果を出せというしょうもない通知を何度も送ってくる本当にやる気のない国なので、まともに審査できるとは思えない。まあ目指すだけならだれでもできるか。

マレーシアの審査官には来月研修で会うのでその辺を聞いてみてもいいかもしれない。5月に会ったときは、まったり在宅勤務していてなかなか優雅な感じだったが。

そんなわけで何が言いたかったかというと、国際調査機関になるのはそんなに楽じゃないし、シンガポールは数年かけて着々と準備を進めてきたということ。

特許法ができてまだ20年しか経ってないのにここまで来たというのは正直驚異的としか言い様がない。この調子でどこまで行くのかを間近で見たいからこの国で働いているのかもしれない。

どう書いてもポジショントークにしかならないな。関連記事を翻訳して会社のサイトに上げているのだが、完全に宣伝になってしまうのでリンクするのはやめておこう。

試験対策その3(転職)

試験対策のためというのもあるが、主に自分の将来のキャリアのことを考えて転職した。

前の事務所は特許・商標の出願と商標の訴訟をしているところだったが、特許のわかる弁理士が一人も居なかった。上司は商標の弁護士で弁理士登録もしているので代理人にはなれるが、中身は一切わからないので、いつも特許チームの同僚と一緒に頑張って調べながら日々仕事をこなしていた。中間処理の応答書面を書いても、お客さんに送る前にチェックしてくれる人も居ない。気がつけば自分が教えざるをえない立場になっていて、特許業務経験豊富な弁理士と一緒に仕事がしたいと強く思うようになった。

他国で特許になったものを方式的にチェックするだけで東南アジア各国で特許にするというのも一つのやり方だが、今後もそうなんだろうかという気持ちもある。それに期限管理や方式チェックばかりで、明細書をじっくり読む機会が減っていたことに対して危機感があった。そもそも期限管理や方式チェックばかりでは全然試験に受かる気がしなかったし、これ以上この事務所に居ても自分のキャリアにとってプラスにならないと思った。

そんなわけで転職先を探すわけだが、単純にこの2つを考えた。

  • 自分が欲しいものを提供してくれる事務所
  • 事務所が欲しいものを自分が提供できる

自分が欲しいものはまともなトレーニング。自分が提供できるのは、非常に心苦しいが日本語なんだろう。まだまだ英語が不十分な自分は、使えるものは全部使わないと厳しい状況にあるので、日本カードに頼ることが最も有効だろう。

トレーニングを提供してくれる事務所をどう見つけるか。所属弁理士の数でわかる気がした。2002年以降に試験に受かった人の数(N)が多ければ、その事務所に所属しながら弁理士試験に受かった人が少なからずいるわけで、なんらかのトレーニング効果が期待で切る。

日本語がわかる人を欲しがっている事務所をどう見つけるか。これはシンガポールでの出願代理件数からわかる気がした。案件をたくさん持っている事務所は、日本からの案件もたくさんあって、日本の顧客もそこそこいるだろう。日本とシンガポールで特許実務経験があって、GCIPコースも終えている自分はそこそこ評価されるだろう。なんてことを考えた。

行くならこの辺の事務所かなとなんとなく思っていた事務所が、電機・機械系の弁理士見習いを募集していたので履歴書を送った。翌日面接の案内が来て、翌週面接に行ったら是非来て欲しいと言われて、こちらとしても申し分ない条件だったのでサインして先月半ばから新しい職場で働いている。

この一ヶ月でやったのは、特許有効性判断1件、拒絶理由通知応答3件、明細書作成3件。経験豊富な特許弁護士がきちんと自分のドラフトをきちんとレビューしてくれるのが非常にありがたい。事務所としては早く一人前になって戦力として働いて欲しいわけで、こちらとしてもきちんと結果を出して期待に応えていきたいところだ。

そんなわけで今年は考えられる限りの手を打った。あとは1ヶ月弱丁寧に対策するのみである。

試験対策その2(SEAD Patent Drafting Training Course 2014)

3つのうちの2つ目はこのコース。

Pro IP Sdn. Bhd. - SEAD 2014

なかなか評判がいいので前々から受講しようと思っていた。FICPI(国際弁理士連盟)という団体がやっているコースである。東南アジアは欧米や日本と比べると特許の実務家教育が進んでいないのだが、それでは先進国の企業がビジネスをする上で都合がよろしくない。そこでアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダからその道何十年という弁理士東南アジアにやってきて特許の教育をするのである。まるで宣教師のように。

今年はマレーシア・クアラルンプール郊外のプトラジャヤの大学が会場である。

Universiti Putra Malaysia

ここの5月と11月に一週間ずつ30名くらいの参加者が集まる実に密度の濃いコースである。前半と後半の間で特許明細書を書く宿題が4つ出ていて、3つまで出した所。11月の後半戦も楽しみである。

料金は2500ドル。これに往復航空券代と宿代を加えるので実際にはもっとかかる。諸事情により自費で払ったが、自分以外の参加者は全員会社が費用を負担していたようだ。でもこのくらい少人数で、きっちりと教えてくれるので十分に価値のあるコースだと思う。

試験対策その1(WIPO distance learning)

気がつけば試験まであと1ヶ月。今回Paper AとPaper Bの2つの試験を受けるために3つ手を打った。そのうちの1つは、WIPO distance learningである。Paper Aの対策として特許明細書を書く練習がしたかったところ、こんなコースを見つけたので受講することにした。

Basics of Patent Drafting (DL-320)

この準備として基礎編も受けておけとのことなのでこっちも受けた。

General Course on Intellectual Property (DL-101)

いまでいうMOOCsというやつなんだろうけど、システムがやたらと古く教材も古い。特許の基礎自体はそんなに変わらないので教材が古いのはまあいいけど、受講開始日にアクセスできないのは困った。たまたまアクセスできたときに必要な書類をダウンロードしてなんとか乗り切った。数日経つと問題なくアクセスできたので負荷の問題だと思う。

料金は先進国の社会人だと400ドル。発展途上国の社会人だと120ドル。学生や特許庁の人はもっと安い。フォーラムでのディスカッションも盛り上がっていて毎日メールが来たが、そのへんに参加する余裕は全然なかったのでざざっと資料を読んで試験だけ受けた。

教材はなかなかよくできていたし、試験もよく考えさせられるもので、これまで明細書を全然書いたことがなかった自分にとっては非常にためになるコースだった。わからないところがあればチューターに相談できたりするのもありがたいかもしれない(使わなかったけど)。